潰瘍性大腸炎について
潰瘍性大腸炎とは
潰瘍性大腸炎は、主として粘膜を侵し、びらんや潰瘍を形成する原因不明の大腸のびまん性非特異性炎症である。医科学国際組織委員(CIOMS)では「主として粘膜と粘膜下層を侵す、大腸特に直腸の特発性、非特異炎症性疾患。30歳以下の成人に多いが、小児や50歳以上の年齢層にもみられる。原因は不明で、免疫病理学的機序や心理学的要因の関与が考えられている。通常血性下痢と種々の程度の全身症状を示す。長期にわたり、かつ大腸全体を侵す場合には悪性化の傾向がある。」と定義している。多くの患者は再燃と寛解を繰り返すことから長期間の医学管理が必要となる。 (出典:難病情報センター )
簡単にまとめると
✔︎大腸の粘膜にただれや潰瘍ができる炎症性(※1)の腸疾患
✔︎発病の原因は不明で、現時点で完治させる治療法はない
✔︎30歳以下の発症が多い
✔︎再燃(症状が悪化する)と寛解(症状が落ち着いている状態)を繰り返す
※1 免疫システムによって起こる腫れや痛み、発熱などの反応
一般的な症状
- 下痢
- 粘血便
- 腹痛
- 発熱
- 倦怠感
- 体重減少
- 貧血
様々な分類
①病変の拡がりによる分類
- 全大腸炎:炎症が大腸全体に渡っているもの
- 左側大腸炎:炎症がひわん曲部を超えていないもの
- 直腸炎:炎症が直腸だけに限られるもの
②病期の分類
- 活動期:症状のある状態
- 寛解期:症状がなく、炎症が治った状態

③重症度による分類
重症(<劇症) | 中等症 | 軽症 | |
---|---|---|---|
1)排便回数 | 6回以上 | 重症と軽症との中間 | 4回以下 |
2)顕血便 | (+++) | (+)~(―) | |
3)発熱 | 37.5℃以上 | (―) | |
4)頻脈 | 90/分以上 | (―) | |
5)貧血 | Hb10g/dL 以下 | (―) | |
6)赤沈 | 30mm/h以上 | 正常 | |
割合 | 10%以下 | 中等症と軽症合わせて、90%以上 | 中等症と軽症合わせて、90%以上 |
入院 | ○ | △ | × |
手術 | 12.5%(50%) | 3.5% | 1% |
※重症の中でもとくに重篤な場合が、劇症となります。
④臨床経過による分類
- 初回発作型:発病して(はじめに悪くなり)内科的治療で寛解し,その後は再燃しないもの。(20%)
- 再燃寛解型:再燃・寛解を繰り返すもの。(70〜75%)
- 慢性持続型:発病して内科的治療を受けたにもかかわらず,6カ月以上寛解しないもの。(5〜10%)
- 急性激症型:急に増悪して,どんどん悪くなっていくもの。

わたしも発症後半年で再燃しましたが、早めに病院に行き、薬をもらうことでかなり軽症ですみました
症状が悪化する前に先生に相談するのが大切です
潰瘍性大腸炎に関するQ&A
潰瘍性大腸炎と診断された人は、これからどうなるのか不安でたまりませんよね。
わたしも去年発病したときは、病室で色々と調べました。
すると同じ炎症性の腸疾患であるクローン病の記事もたくさんでてきます。
最初は違いがわからず、
「これから食生活が大きく変わるんだ。お肉やラーメンとか食べられなくなるかもしれない…」
と本当に落ち込みました。
ですが、食事療法が効果的なクローン病に対し、潰瘍性大腸炎は基本的に食事制限は必要ありません。
こういった混同をしないためにも、潰瘍性大腸炎に関する一般的なQ&A(出典;「難病情報センター」、「武田薬品工業株式会社」)をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
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この病気は慢性疾患ですが、平均寿命は一般の人と比べて変わりません。薬を長く飲み続けたり、時折入院を必要としますが、普段通りの生活を続けることができます。食事や運動に関しても症状が治まっていれば(寛解)、特別な制限はありません。

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潰瘍性大腸炎だというだけで、進学や就職に特別に配慮する必要はありません。ただし、定期的な通院と治療継続が必要な疾患ですので、進学や就職をしても病院を定期受診すること、病気が悪化した場合は病院を受診することがあることなども伝えた上で、きちんと理解が得られる職場を選ぶことが望ましいです。

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潰瘍性大腸炎だというだけで、体が弱くなったり、他の病気にかかりやすくなることはありません。
ステロイド剤をはじめとする、免疫を抑制する治療を受けている場合は、わずかですが感染症にかかるリスクが上がりますので、感染症予防に留意が必要です。
また、潰瘍性大腸炎の炎症が腸管に長期に持続すると、大腸癌のリスクが上がるとされているので、癌化を防ぐためにも適切な潰瘍性大腸炎の治療を継続することと、定期的な内視鏡検査が必要です。
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多くの研究が行われていますが、現時点では、明らかに潰瘍性大腸炎を発症させたり、悪化させることが立証された、特定の食事の報告はないため、食事を制限する必要はありません。
ただし、特定の食事をとることで病気が悪化すると感じている方は、その食品を避けるとよいでしょう。

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刺激物や塩分の強すぎるものを避け、消化のよい食事が勧められます。また、乳製品、脂肪、食物繊維、カフェインなども避けた方がよいでしょう。

ゼリーやうどんなど消化にいいものを食べていました
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症状が落ち着いている場合、飲酒は問題ないと言われています。ただし、アルコールはもともと下痢を増加させる作用があるので、症状が悪化している活動期には下痢や出血が増えるため、お酒は控えたほうがよいです。
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通常、同じと考えてよいでしょう。潰瘍性大腸炎の患者さんと一般女性との妊娠率には差がないと報告されており、同じように正常分娩で健康な赤ちゃんを出産しています。男性患者さんの場合はサラゾピリンを服用していると、この薬による精子形成の抑制が起こるため、一時的に男性不妊の状態になります。妊娠を希望する場合、5-ASA製薬に切り換えるとよいでしょう。

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薬物治療を続けることは潰瘍性大腸炎の悪化を予防できることがわかっているので、症状がなくても自己判断で薬を中止するのではなく、主治医に相談することが大切です。
発病してから数年間、再燃しない患者さんもおられますが、通常、多くの患者さんは再燃と寛解を繰り返します。従って、症状がなくても寛解を維持するために5-ASA製薬を続けるのが原則です。特に5-ASA製薬は長期に服用することの安全性は確認されていますし、さらに合併症の大腸がんを予防することが近年報告されています。

まとめ
いかがでしたか?
潰瘍性大腸炎について少し知識が深まったでしょうか。
病気になって辛くて、これからどうなるのか不安でいっぱいだと思います。
ですが大切なのは、この病気について学び、予防できることは予防し、症状がでてしまったら早めに対処すること。
この病気と闘っている人は日本国内だけでも、12万人以上います。
長い付き合いになりますが、一緒に頑張っていきましょう。

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